藤井製作所プレス加工一貫生産・樹脂成形・両技術の融合
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コイニング加工

「コイニング加工って何をする加工?」「エンボスやスタンピングと何が違うの?」「どんな精度が出るの?」——この記事では、精密プレス加工を手がける藤井製作所が、コイニング加工の目的・仕組み・使いどころを現場目線でわかりやすく解説します。


コイニング加工とは

コイニング加工とは、板材の表面をパンチとダイで強く押し込み、金型の形状を素材に「写し取る」プレス加工法です。 名前の由来は「Coin(硬貨)」の製造にあります。500円玉や100円玉の表面には細かな模様や文字が刻まれていますが、あれだけ精密な形状を大量に・均一に・ズレなく作れるのはコイニングの原理があるからです。この技術を工業部品の製造に応用したものが「コイニング加工」です。

コイニング加工の3つの目的

コイニング加工が使われる場面は、大きく次の3つに分類されます。

用途 何をするか 代表的な適用例
① 刻印・マーキング 文字・数字・ロゴ・模様を表面に押し込む 部品番号刻印、ブランドロゴ入れ、硬貨・メダル
② 部分薄肉化 特定箇所だけ板厚を薄くして段差を作る 折り曲げ起点の薄肉化、端子の嵌合部、精密ヒンジ
③ 面押し・面出し 表面を押し潰して平滑・高精度な基準面を作る シール座面、精密嵌合面、スライド摺動面

※ これらは単独で行われることも、複数を組み合わせることもあります。

なぜ高い精度で「写し取れる」のか

通常のプレス加工では、金属が持つ「バネのような弾性」によって、金型から取り出した瞬間に形状が少し元に戻ってしまいます(スプリングバック)。これが寸法のバラつきや刻印の浅さ・不鮮明さの原因になります。
コイニング加工では材料降伏応力の5〜8倍という非常に大きな圧力をかけることで、素材の断面全体を塑性変形させます。その結果、スプリングバックがほぼゼロになり、金型の形状が忠実に素材に転写されます。これが「高精度な刻印・薄肉化・面出し」を可能にする根拠です。

ポイント:コイニングの本質は「板材表面を局所的に押し込んで形状を写し取ること」。高精度・スプリングバックなしはその結果として得られる特性です。


コイニング加工と類似工法の違い

「表面に形状を加える」工法はコイニングだけではありません。目的・変形の仕方・精度の観点から整理します。

工法 主な目的 変形の深さ・範囲 向いているケース
コイニング 刻印・薄肉化・面出し 局所的・浅い〜中程度 寸法精度が必要な刻印・嵌合面・段差成形
エンボス加工 補強リブ・立体模様の付与 局所的・中〜深め 剛性向上・意匠デザイン・補強パターン
スタンピング(打刻) 文字・記号の表面刻印 極めて浅い・点的 簡易マーキング(精度より視認性重視)
ハーフブランキング(ハーフパンチ) 板材を途中まで打ち抜き突起を作る 板厚方向に深め かしめ接合用の突起・スナップフィット形状
バーリング加工 穴周囲を立ち上げてフランジを作る 穴周辺に集中 ねじ穴の強度確保・板金の接続部

エンボス加工との違い

エンボス加工は板材を「立体的に浮き出させる」工法で、補強リブや意匠パターンを付与するのが主目的です。加圧力は比較的小さく、形状を「立ち上げる」イメージです。一方コイニングは「表面を押し込む・薄くする・面を出す」ことが目的で、加圧力も大きく精度要求も高い点が根本的に異なります。

スタンピング(打刻)との違いい

スタンピングも文字・記号を板材に刻む工法ですが、ハンマーや簡易プレスで打ち込む「衝撃型」の加工です。加工精度・再現性はコイニングより低く、大量生産での寸法安定性には劣ります。「視認できれば良い」程度の簡易マーキングにはスタンピング、「精密な形状再現・寸法管理が必要」ならコイニングが選ばれます。

ハーフブランキング(ハーフパンチ)との違いい

ハーフブランキングは板材を途中まで打ち抜き、反対面に突起(ダボ)を作る工法です。かしめ接合やスナップフィット形状の形成に使われます。「凹みを作る」点はコイニングと似ていますが、板厚方向に深く変形させる点・突起を積極的に作る点が異なります。


コイニング加工で得られる精度と特性

コイニング加工を採用することで、通常のプレス加工と比べてどれほどの違いが出るか、主要な項目で比較します。

項目 一般的なプレス加工 コイニング加工
寸法公差 ±0.1〜±0.3mm程度 ±0.01〜±0.05mm程度
スプリングバック 発生する(補正設計が必要) ほぼゼロ
表面粗さ 金型精度に依存・やや粗い 金型面が転写され平滑
刻印の再現性 △(打刻は可能だが精度低め) ◎(細部まで忠実に転写)
板厚のコントロール ✕(板厚変化させるのは困難) ○(部分的な薄肉化が可能)

加工硬化による強度向上

高圧縮を経た部位は加工硬化により硬度・強度が向上します。刻印部や薄肉化した部位の耐摩耗性向上にも寄与するため、繰り返し荷重が加わる精密部品に適しています。

後工程の省略

高精度な面出し・刻印を一工程で得られるため、別途の研磨・仕上げ工程を削減できるケースがあります。工程数の削減はリードタイム短縮・コスト低減に直結します。


コイニング加工のデメリット・注意点

① 大きなプレス荷重が必要

材料降伏応力の5〜8倍という加圧力が必要なため、大トン数のプレス機が必要になります。同じサイズの部品でも一般的な曲げ・打刻より大きな設備能力が求められます。

② 金型への負担・コスト

高圧縮を繰り返すため金型には大きな疲労荷重がかかります。金型材の選定・熱処理・表面処理(PVDコーティング・窒化処理など)に高い技術とコストが必要で、金型寿命の管理も重要です。

③ 適用材質の制限

延性が低い材料(硬質ステンレス・チタン・高張力鋼など)はコイニング中に割れが生じるリスクがあります。材質選定と加工条件の設計が品質を左右します。

④ 薄板での過剰加工リスク

薄すぎる材料に過剰な圧力をかけると、素材が横に逃げてバリが大量発生したり、板厚が不均一になるケースがあります。適切な板厚・金型クリアランスの設計が不可欠です。


コイニング加工に適した材質

刻印・薄肉化・面出しの可否と品質は、材質の特性に大きく依存します。延性・加工硬化の特性から適性を整理します。

材質 コイニング適性 ポイント
SPCC(冷間圧延鋼) ◎ 最適 延性が高く加工硬化が安定。コイニングの定番材料。
アルミニウム ○ 良好 軟らかく成形しやすい。薄肉化・刻印に適する。
銅・真鍮 ○ 良好 導電部品・装飾品に多用。成形性に優れる。
ステンレス(SUS304) △ 要注意 加工硬化が激しく大きな加圧力が必要。金型摩耗に注意。
高張力鋼・チタン ✕ 困難 変形抵抗が非常に高く、割れリスクがある。原則不向き。

藤井製作所では上記材質すべてに対応しており、材質選定段階からのご相談も承っています。


コイニング加工の金型設計ポイント

クリアランス設計

コイニングでは金型と材料のクリアランスをほぼゼロに設定することが基本です。クリアランスが大きすぎると、圧力が逃げて刻印が甘くなったり、薄肉化の精度が落ちます。材質・板厚・加工目的ごとに最適値を設定します。

金型材質と表面処理

SKD11(合金工具鋼)やPM高速度鋼など耐摩耗性の高い材質を選定し、PVDコーティング・DLCコーティング・窒化処理などの表面処理で金型寿命を延ばします。刻印の細かさや面粗度の要求が高いほど、金型の仕上げ精度も重要になります。

金型精度管理

コイニングで±0.05mm以下の刻印精度・薄肉精度を実現するには、金型自体がそれを上回る精度(±数μmレベル)で製作されている必要があります。ワイヤーカット放電加工・平面研磨・座標測定機(CMM)による検査が必須です。
藤井製作所では金型設計・製作から一貫対応しているため、加工条件と金型仕様を一体で最適化できます。


藤井製作所のコイニング加工対応力

藤井製作所(千葉県柏市)では、コイニングを含む精密プレス加工を金型設計から表面処理まで一貫して対応しています。

項目 内容
一貫生産体制 金型設計・製作 → プレス加工 → 機械加工 → 熱処理 → 表面処理まで社内完結
対応板厚・精度 板厚 t=0.2〜5.0mm、加工サイズ 450×300mm、寸法公差 ±0.1(追加工でさらに高精度対応)
保有プレス設備 サーボプレス 110t〜200t/機械式汎用プレス 35t〜150t/機械式高速プレス 25t
対応材質 SPCC、SPHC、SCM、SS材、SK材、アルミニウム、銅、真鍮、ステンレスなど
得意ロット 1個〜1,000個。試作から量産まで柔軟に対応。
設計サポート 図面なしでも相談可。VA/VE提案・材料選定・仕様提案に対応。
品質認証 ISO9001:2015 / ISO13485:2016(医療機器対応)取得済み
  • 金型設計・製作、プレス加工、機械加工、熱処理、表面処理をすべて社内で完結
  • 3D CAD/CAMによる迅速な図面対応・試作対応
  • ワイヤーカット放電加工・平面研磨・ホーニングなど高精度仕上げにも対応
  • 1個からの試作・小ロット生産に対応。図面なしの相談も歓迎

よくあるご質問(FAQ)

質問 回答
エンボスとコイニングの違いは? エンボスは「形状を立体的に浮き出させる」工法で補強・意匠目的が中心です。コイニングは「表面を精密に押し込む」工法で、刻印・薄肉化・面出しの精度を追求します。加圧力と精度要求が大きく異なります。
刻印の深さはどこまで対応できますか? 材質・板厚・文字サイズによります。まずはご相談ください。図面・サンプルをもとに加工可否を確認します。
試作・小ロットから対応できますか? はい。1個からの試作・小ロット生産に対応しています。図面がない段階でも構いません。
薄肉化の寸法精度はどれくらいですか? コイニング単体では±0.01〜±0.05mmレベルが目安です。弊社標準は±0.1で、追加工との組み合わせでより高精度にも対応します。
ステンレスへの刻印は可能ですか? 可能ですが、加工硬化が激しいため、通常材より大きな圧力と金型耐久性の工夫が必要です。加工条件の設計を含めてご相談ください。

コイニング加工は「板材の表面を局所的に押し込み、刻印・薄肉化・面出しを高精度に行う」プレス加工法です。硬貨製造を起源とするこの技術は、工業用ミシン・半導体装置・自動車・医療器具など、精密さが求められるあらゆる分野で活用されています。
エンボスやスタンピングが「形を付ける・視認性を確保する」ことを目的とするのに対し、コイニングは「精密に写し取る・寸法を正確に管理する」ことを目的とします。スプリングバックほぼゼロ・高表面品質はその結果として得られる特性です。
一方で大きなプレス荷重・高精度な金型・材質制限といった課題もあるため、製品要件と生産条件を踏まえた工法選定が重要です。